気密測定は意味がない?その真相と住宅の快適性への影響

住宅の性能を評価するうえで、「気密性能」は非常に重要な指標の一つです。気密測定を行うことで、建物の隙間の大きさを数値化し、どの程度の気密性が確保されているのかを客観的に判断できます。
しかし、「気密測定は意味がない」と考える方も少なくありません。その理由として、「実際の居住環境では隙間が多少あっても問題ない」「高気密を追求しすぎるとコストがかかる」「換気計画のほうが重要ではないか」といった意見が挙げられます。
本記事では、気密測定の意義について詳しく解説し、測定結果の見方や、住宅の快適性・省エネ性への影響について考察します。
目次
気密測定とは?

気密測定(Blower Door Test)とは、住宅の気密性を数値化するために行う検査です。専用の測定装置(ブロアドアテスト機器)を使用し、建物内外の圧力差を作ることで隙間から漏れる空気量を測定します。
この測定では、室内の空気を外に排出して負圧を作り、その際に外部からどれだけの空気が流入するかを測定する方法が一般的です。逆に、室内に空気を送り込み正圧にして測定する方法もあります。測定結果は、隙間面積(C値)や気密性能の指標となるACH50(50Paの圧力差で1時間に何回空気が入れ替わるか)として数値化されます。
気密測定の目的
気密測定の目的は、住宅の気密性能を正確に把握し、必要に応じて改善を行うことです。具体的には、以下のようなメリットがあります。
- 省エネルギー性能の向上:気密性が高い住宅では、冷暖房の効率が向上し、エネルギー消費を抑えることができます。
- 快適性の向上:隙間風が少なくなり、温度ムラのない快適な室内環境を実現できます。
- 結露やカビの防止:気密性が低いと壁内で結露が発生しやすく、カビや木材の腐食の原因になります。
- 換気計画の適正化:気密測定により、換気システムが計画通りに機能するかを確認できます。
気密測定の測定手順
- 測定機器の設置:玄関や窓にブロアドアテスト機器を取り付け、建物内の空気を外部に排出(負圧測定)または供給(正圧測定)する準備をします。
- 気圧差の設定:室内外の気圧差を50Paに設定し、どれだけの空気が流入・流出するかを測定します。
- 数値の算出:C値、ACH50、n値などの指標を計算し、建物の気密性能を評価します。
- 改善点の特定:測定データをもとに、施工の不備や隙間の多い箇所を特定し、改善策を講じます。
この測定結果により、住宅の隙間面積や気密性能が数値として表され、省エネ性能や快適性の評価に活用されます。
気密測定を行うことにより、建物の施工精度を確認できるだけでなく、適切な換気計画の策定にも役立ちます。気密性が低いと計画通りの換気ができなくなり、空気の流れが予期せぬ形で変わってしまう可能性があります。
気密測定の主な指標
- C値(相当隙間面積):建物の床面積1㎡あたりの隙間の大きさを示す値。C値が小さいほど気密性が高い。
- n値(漏気経路指数):気密測定時の圧力差に対する漏気量の変化を示す指標。1.0に近いほど施工精度が高い。
- ACH50(1時間あたりの空気交換回数):50Paの圧力差をかけたときに、1時間あたりに室内の空気が何回入れ替わるかを示す値。
この測定結果により、住宅の隙間面積や気密性能が数値として表され、省エネ性能や快適性の評価に活用されます。
気密測定を行うことにより、建物の施工精度を確認できるだけでなく、適切な換気計画の策定にも役立ちます。気密性が低いと計画通りの換気ができなくなり、空気の流れが予期せぬ形で変わってしまう可能性があります。
「気密測定は意味がない」と言われる理由

気密測定に否定的な意見が出る背景には、以下のような理由があります。
1. ある程度の隙間があっても生活に支障がない
「昔の家はもっと隙間があったのに、問題なく住めていた」という意見があります。確かに、ある程度の隙間があっても自然換気が促され、空気の流れが生まれるという考え方もあります。しかし、これにはデメリットもあり、冬場には冷たい外気が侵入しやすく、暖房効率が著しく低下するという問題も発生します。
また、現代の住宅では、快適な室内環境を維持するための24時間換気システムが義務化されており、適切な換気設計と併用することで、健康的で効率的な空間を作ることが可能です。
2. 高気密化にはコストがかかる
気密性を高めるためには、施工の精度を上げる必要があり、結果としてコストが上昇します。特に、C値(相当隙間面積)を極限まで低くしようとすると、追加の施工や専用部材が必要になり、コストが跳ね上がることがあります。しかし、これは短期的なコスト増加にすぎず、長期的にはエネルギー消費を抑え、冷暖房費の削減につながるため、最終的には費用対効果が高い選択肢となります。
さらに、気密性を高めることで、冷暖房設備の効率が向上し、小さな空調機器でも十分な快適性を確保できるため、将来的なランニングコスト削減につながります。
3. 換気システムの性能が重要では?
「気密性を高めるよりも、しっかりした換気システムを導入したほうが快適なのでは?」という意見もあります。確かに、換気システムは重要ですが、気密性が低いと計画換気がうまく機能しなくなる可能性があります。たとえば、換気扇を回しても外部の隙間から不要な空気が流入し、適切な換気が行えなくなることもあります。
適切な気密測定を行い、換気計画と合わせて設計することで、計画通りの空気の流れを確保し、快適な住環境を実現できます。
気密測定の具体的な方法
気密測定は以下の手順で行われます。
- ①測定機器の設置: 建物の玄関や窓に測定機器を設置し、密閉状態を作ります。
- ②内部と外部の気圧差の設定: 室内を負圧または正圧にし、隙間から漏れる空気量を測定します。
- ③数値の算出: C値、n値、ACH50などの指標を算出し、建物の気密性能を評価します。
- ④改善点の特定: 測定結果をもとに、施工の不備や改善点を洗い出します。
気密測定の結果を改善する方法
気密測定の結果が望ましい数値に達していない場合、以下のような対策を行うことで改善が可能です。
- ①断熱材の適切な施工: 隙間を埋めるために、断熱材を正しく施工する。
- ②窓やドアのシーリング強化: 開口部の隙間をなくすことで、気密性を向上させる。
- ③配管やコンセント周りの処理: 配管や電気コンセント周辺の隙間を埋める。
まとめ
「気密測定は意味がない」との意見があるものの、適切な気密性の確保は住宅の省エネ性能や快適性向上において重要な要素です。
▼ポイントまとめ
- C値1.0以下が理想的な気密住宅
- n値が1.0に近いほど施工品質が良好
- ACH50が1.0以下なら省エネ効果が高い
- 気密と換気はセットで考えることが重要
- 適切な気密測定により、冷暖房効率を向上させ、結露を防ぐことができる
- 気密測定の方法と改善策を理解し、より良い住環境を作る
気密測定の結果を正しく理解し、適切な基準で住宅の性能を向上させることが、快適な住環境づくりの第一歩です。